前回のブログ「虫供養はご存じですか?」でも触れましたが、
我が社は害虫駆除の会社です。
そもそも私は小さな頃から虫が大嫌いでした。
この会社に雇われるときも若干の不安はあったのですが、
職種は事務職でしたので、まあ余り関係ないだろうとたかをくくっていました。
実際、現場に行くことはありませんので虫の現物を見るという事はほとんどないのですが、
「これってなんの虫ですか?」というメールが写真つきで来たり、取引先のパンフレットにシロアリの羽ありの写真がでかでかと載っていたり。
正直、鳥肌が立つこともしばしばあります。
会社のフロアには過去に駆除したオオスズメバチの巨大な巣が誇らしげに飾ってありますし、
ある社員の机の上にはプラスチックでできた大きなハチの模型が大事そうに載せてあったりします。
(やめて欲しい・・・)
男の子のお母さんならおわかりでしょうが、連日公園遊びなどに付き合っているとしょっちゅう虫と遭遇しますよね。
ある男の子はダンゴ虫が大好きで、ズボンのポケットに溜めていて、それに気が付かないお母さんが洗濯してしまい、洗濯槽にグルグル回るダンゴ虫に絶叫したという話を聞いたことがあります。
そんなお母さんの希望となるべく、私の虫嫌いの治し方をお話しします。
多分皆さまの思うような訓練とはちょっと違うかもしれませんが、子育て中のお母さんには、効果抜群かと思います。
まずは、ちょっと遠まわりに感じるかもしれませんがこれを読んで下さい。
ある日私はお客様からの電話に出たのですが、「スズメバチが家の中を飛びまわってる、すぐ来て欲しい!」と。
でも季節は冬、まだ寒空の3月初旬だったので内心「この季節にハチなんて飛ぶの?」と半信半疑。
施工マン(現場で実際に駆除にあたる担当者です。)が現地に赴きましたが、やはり実物は見つからずじまいでした。
それでちょっとネットで調べてみたんです。
「ハチ、寿命」とね。虫なんだから冬は越せないでしょ!
虫が一年以上も生きるはずないでしょ!と思いながらね。
するとなんと、ハチの女王バチは越冬すると出てきたんです。
驚きでした。爬虫類ならともかく昆虫が冬の低温の中どうやって生き延びるのでしょうか?
どうやら他の働きバチや雄バチは死んでしまうけれど、
女王バチは寒い冬を超えて春の暖かい日に新しい巣を作り始めるために飛び立つのだと。
ちょっとそこからが感動的な物語でした。
冬を乗り越えた女王バチはたった一匹で新しい巣を作り始めます。
本当にたった一匹です。
色々と安全な場所を探しながらやっと見つけた場所に唾液と木の皮などを混ぜた材料を運んできて
一つ目のあの六角形の巣の最初の一つをつくります。
何度も往復して材料を運び少しずつ壁を伸ばしていくのです。

ある程度の深さになるとそこにやっと卵を一つ産み付けます。
そして、また次の部屋の壁を少しずつのばしていくのです。
ずっと一匹で休みなしです。
しばらくして卵がかえり幼虫になると、今度は部屋を作りながら幼虫のえさとなる獲物も狩らなければなりません。
幼虫の世話もしながら、部屋作りの材料も運びます。
部屋がひとつできるたびに卵を一つだけ生みつけます。
そうして幼虫が増えてくると来る日も来る日も狩りをし、かいがいしく幼虫の世話をするのです。
やがて大切に育てられた幼虫が蛹(さなぎ)になります。
その蛹が羽化してやっと一匹めの働きバチが誕生します。
独りぼっちで奮闘してきた女王バチに初めての味方ができるのです。
でも働きバチは経験が浅く、巣作りも幼虫の世話も女王バチに教えてもらわなければうまくできません。
中には、全くやる気のない働きバチもいて巣の上でじっとしてるだけの子もいたりしてなかなか女王バチは楽になりません。

そうして必死に働き続けるとなんとか働きバチが増えてきて、
やっと女王バチは卵を産む事だけに専念できます。
ここまでこぎつけると、最初一部屋だった六角形の巣も幼虫も十以上になり
働きバチも5~8匹、協力して幼虫の世話にあたります。
もう十分な数に思えますが、女王バチは卵を産み続けます。
女王バチには少しでも巣を大きくしなければならない理由がありました。
寄生蛾や寄生バチです。
この寄生蛾は自分の巣をもたず、よその巣に忍び込みよその幼虫の体にたまごを産みつけます。
悲しいかな、ハチはこれを阻止する術を持ちません。
たまごを産み付けられた幼虫は体を喰われ、寄生蛾の幼虫はまんまとその部屋をのっとってしまいます。
寄生蛾の幼虫の体はハチよりずいぶん小さいのですが、
巣の入り口に強力な糸をはり、ハチの侵入を許しません。
そうして女王バチが懸命に作りあげた巣をのっとり大切な子供たちを殺してしまうのです。
寄生蛾にのっとられたハチの巣
つまりは、女王バチは寄生ありきで一匹でも多く幼虫が生き残れるように巣を大きくするのです。
寄生蛾って腹立たしいですよね。
この半分無駄な、でも大切な女王バチの努力は人間の子育てに似ていませんか?
幸運にも無事に次期女王バチとして羽化した新女王バチだけが交尾をはたし越冬し、
次の春にまた一から巣作りをするのです。
そのたった一つの目標をはたすため、女王バチは一人で越冬し、命がけで働き、たまごを産み続け、秋を迎える頃に死んでいきます。
たった一匹で、寄生されるのを前提で巣を作ろうとするハチ・・・。
昆虫とは思えないけなげさ。勤勉にひたすら働く一途さ。途中の困難にもくじけない意思(本能)の強さ。自然の残酷さ。
なんだか人間よりずっと崇高な生き方のように感じて感動してしまいました。
私は、ハチの事を調べていくうちに一つの動画に辿り着きました。
それが「196710Noby」です。
YouTubeでは、有名な動画のようです。
科学目線でのハチの一生を動画にしたサイトもたくさん公開されていますが、
「196710Noby」はちょっと他のサイトとは一線を画しているように思います。
NHKの教育番組にも劣らないカメラ映像でありながら、
実にドラマチックにアシナガバチの一生を描いています。
引き込まれます。見るだけで鳥肌がたつほど虫嫌いの私が、目が離せなくなり続きを見ずにはいられない、
小さな命の広大な物語が繰り広げられています。
一編は10分無いほどの短いものでとても見やすいですが、そのタイトルはもはや哲学的で長編映画のそれのようです。
よろしければ、是非一度ご覧ください。
「何を好き好んで、虫の動画なんて見ないといけないのよ!」
「昆虫の動画なんて気持ち悪すぎる!」
そう思った方にこそ見ていただきたい動画です。
嘘みたいですが、きっと大嫌いだったハチを少し好きになると思いますよ。
そうなると、不思議と他の虫たちもけなげに見えてきて、ちょっと余裕をもってダンゴ虫にも対処できるようになると思います。
196710Noby様、勝手に動画の紹介をさせていただきました。ご意向に沿わない部分がありましたら、申し訳ありません。
注:このブログは専門的な知識の掲載を目的としておりません。厳密な昆虫の生態に間違いがあってもどうかご容赦願います。

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